ノンフィクション作品『かなえびと』の作者であり、毎日新聞論説委員として長年、人の生き方や社会のあり方を見つめてきた小倉孝保氏が、神戸で開催された「かなえびとの集い」での講演を前に、公益財団法人藤井財団の事務所を来訪されました。

この日の訪問は、単なる表敬ではありません。
『かなえびと』の中心人物として描かれている「メイク・ア・ウィッシュ オブ ジャパン」初代事務局長の大野寿子氏が引き合わせてくれたご縁の賜物なのです。難病の子どもたちの「夢」を叶える活動に人生を捧げた、大野氏という稀有な女性の生き方を、小倉氏は一冊の著作として世に届けました。また、彼女自身も余命1ヶ月を告げられながらも、夢を追い続けていました。
その大野寿子氏の生き方に深く心を打たれ、思いをともにしてきたのが、藤井勝典理事長です。
作品を通して人の生き方を伝えてきた書き手・小倉氏と、その精神に共鳴し、次世代へつなぐ実践を続けてきた藤井理事長。
そして、その両者を結ぶ存在としての大野寿子氏。
三人の関係性こそが、今回の来訪の背景にあります。
当日は昼食を囲みながら、終始和やかな雰囲気の中で語り合いが続きました。
小倉氏は、滋賀県長浜市にある実家の話題に触れ、84歳になる母親が今も営む喫茶店が、地域の高齢者にとっての憩いの場であり、自然な「見守りの場」になっていることを紹介しました。
毎朝、顔なじみが集い、誰かが来なければ「どうしたんやろ」と気にかけ合う。
そんな何気ない日常こそが、地域や人を支えているのではないか。
その言葉に、藤井理事長やスタッフも深くうなずきます。
話題はやがて、藤井財団が取り組んできた子ども向け教育支援へと移ります。
藤井理事長からは、「野口英世だけで終わらない偉人像を、子どもたちに届けたい」という思いから始まった、起業家や実践者の生き方を描くアニメーション制作の話が語られました。

DVDからクラウド配信へと形を変えながら、全国の学校や学童保育、図書館へと広がってきたこの取り組みについて、小倉氏は
「短い時間で結果を求めがちな今の社会だからこそ、こうした活動の価値がある」
と語ります。
教育や文化は、今の世代のためだけでなく、次の世代、その先の世代へと続いていくものだ―― そんな共通認識が、自然と共有されていきました。
また、小倉氏の著書『100年かけてやる仕事-中世ラテン語の辞書を編む』の話題にも触れられました。
100年という時間をかけ、ボランティアの手によって完成した辞書づくりの物語。
「自分たちの代で完成しなくてもいい仕事を引き受ける」という姿勢は、『かなえびと』で描かれた大野寿子氏の生き方とも、藤井財団の活動とも重なります。
講演前の限られた時間ではありましたが、言葉と実践、そして人と人とをつなぐ、あたたかな対話のひとときとなりました。
ご多忙の中、わざわざ財団に立ち寄ってくださった小倉孝保氏に、心より感謝申し上げます。

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小倉孝保(おぐら・たかやす)氏のプロフィール
論説委員兼専門編集委員
1964年生まれ。88年入社。カイロ、ニューヨーク両支局長、欧州総局長、外信部長、編集編成局次長を経て現職。英外国特派員協会賞や小学館ノンフィクション大賞、ミズノスポーツライター最優秀賞の受賞歴がある。
■ 最新のお知らせ
小倉孝保氏の著書『かなえびと』が、
大阪・隆祥館書店において ノンフィクション大賞 第1位 に選ばれました。
同書は、メイク・ア・ウィッシュ オブ ジャパン初代事務局長として
難病の子どもたちの夢を叶え続けた 大野寿子氏の生き方 を描いたノンフィクション作品です。彼女自身も余命1ヶ月の宣告を受けても、夢を追い続けた。
隆祥館書店による選出の背景や書評は、以下の記事で紹介されています。
▶ 隆祥館書店 公式note
https://note.com/ryushokanbook/n/n51325814431f?sub_rt=share_b